#5 校長による勤務終了の「明確な意思表示」について

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため無賃残業訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は第2回の裁判でも述べた、「校長による勤務終了の意思表示について」について書きます。

校長は、”明確な意思表示”を行うべきである

教育委員会は、教員の時間外労働について、「校長は教員に対して時間外勤務を命じていない」と主張します。

しかし、そうであれば、「校長は勤務時間終了とともに勤務を終了するよう、教員に対して”明確な意思表示”を行うべきである」というのが私の考えです。

ところが、実際には校長は、教員に対して勤務終了の意思表示は行っておらず、その一方で、勤務を終了する教員に対してその意思表示をさせています。

私の職場では、実際に教員が勤務を終了して退勤する際には、管理職のところに行って、退勤する旨を申告するように指示されていました。

これは、教員から退勤の意思表示がなされた時刻まで勤務を続けることを、校長が容認している、すなわち時間外勤務を命じているということになるのではないでしょうか。

教員が勤務時間外まで勤務を続けることが常態化している状況において、特に若い教員が、17時に校長の席まで行って「帰ります」と申告するのは、非常に勇気がいることであり、決められた時間に勤務を終了することは、現実的には非常に困難です。

実際、私は17時に勤務を終了する若い教員を見たことがないし、私自身においても定時に勤務を終了し、校長に退勤を申し出ることは、長年の間できませんでした。

本来は、定時に勤務を終了するのが原則であり、勤務を続けるのが特別なのであるから、校長は、「時間外勤務を命じていない」ということをまずは明確に示した上で、定時以降に勤務を続けることを特に希望する教員が、校長に断って勤務を続けるようにするべきではないでしょうか。

民間労働者の場合、労働者が就業時刻以降も就労しており、上司がそれを知って放置しているような場合、使用者の指揮命令下の労働と評価されるのが通常であり、教員についてのみ、異なる解釈を取るべき根拠はないと私は考えます。

裁判では、このような内容を訴えています。

文科省も「黙示の超過勤務命令」を認めている

先日、文科省YouTubeチャンネルから、第1回 「~公立学校の校長先生のための~やさしい!勤務時間管理講座」(「公立学校の教師の勤務時間管理の基本」)という動画が発表されました。

このなかでは、

「命じるというのは明確に『〇〇しなさい』という発言がある場合はもちろんですが、明確な命令や言葉が文書で発せられていない場合でも実質的に使用者の指揮命令下に置かれている状況にあれば、それは『黙示の超過勤務命令』があったとされることに注意が必要です」

と述べられています。

全国の学校現場で校長による勤務終了の“明確な意思表示”が行われ、適正な労務管理が進むことを望みます。

お読みいただきありがとうございます。

なお、裁判の意見陳述書については、裁判資料のページからPDFをダウンロードしていただければ全文お読みいただけます。