現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。
今日は、「教員の超勤問題を労基法違反で訴える」という私の考えについて書きます。
教職の特殊性が誤って解釈されている
同じ仕事にもかかわらず、勤務時間内であれば「正規の業務」、勤務時間外であれば「自主的な業務」とされてしまうのが、今日の学校教員の置かれる現状です。
これまで学校現場では、これが教職の「特殊性」と誤って解釈されてきました。こうした解釈は本来の「特殊性」ではありません。
本来の教職の「特殊性」とは、教員が授業をより良くするためにどのような工夫をするかといった「仕事のやり方」について認められるものです。
「特殊性」があるから「自主的な業務」になる、という解釈は正当ではないということです。
同じ仕事をしているのに勤務時間外となった途端に「自主的な業務」とされてしまうのは、明らかにおかしな話です。
私はこのような現状を打破するために、裁判で、「勤務時間内に終わらない仕事を命じていることは、時間外勤務を命じていることと同じ」と主張しています。
教職調整額が支給されているから問題ない?
今回、裁判では埼玉県は勤務時間外・超勤4項目以外の業務について、次のように主張しています。
「仮に教員の勤務が正規の勤務時間外に及んだとしても『教職調整額』が支給されている。よって、無賃労働ではない」
「教員の職務及び勤務態様の特殊性を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果として『教職調整額』を支給している」
これまでは、教員の超過勤務はあくまで「自主的」だから残業代は支給しない、時間外勤務は命じていない、という理論が全面に立っていましたが、今回私の裁判では、「時間外勤務も存在するが、教職調整額を支給しているから問題ない」という論理です。
県は、教職調整額は超勤4項目に対してだけでなく、超勤4項目以外の日常的な業務も含め、勤務時間の内外を包括的に評価して支給するものとしているのです。
労働基準法違反で訴える
給特法の第一条は、教員の仕事には特殊性があると言っています。
ところが現在の学校現場は給特法に罰則がないことを良いことにその趣旨(教職の特殊性)を曲解して、校長が現実には業務を命令しているに等しい実態があります。それが問題です。
そもそも、労働基準法は1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて働かせることを原則として禁止しています(労働基準法32条)。法定労働時間を超えて働かせる場合には、それが例外的に許されるための根拠が必要です。
給特法は、超勤4項目の業務についてのみ、例外的に教員を勤務時間外に働かせることを認めています。逆に言えば、超勤4項目以外の日常的な業務について、教員を勤務時間外に働かせることは、給特法においても認められていません。
文科省は校長の権限を強くして、教員に組織の一員として行動することを求めています。それが勤務時間内に収まるなら構いません。しかし、それが勤務時間外にまで及ぶなら、労働基準法違反であり、本来は労働基準法に基づき超勤4項目以外の日常的な業務については36協定を結び割増賃金を支払うべきではないのかと、裁判ではこのように主張しています。
ですから、現状の給特法上でも残業代が支払われる余地がある、私はそう考えています。
その余地は何か。
それは、職員会議を通じて業務が命じられているかどうか、です。
職員会議は校長の諮問機関とされており、職員会議を通じて決められた業務を教員が拒否する権限はありません。
たとえ明確な命令がなくても、学校の方針に基づく業務を勤務時間外に行った場合に対しては、労働基準法に基づいて残業代を出すべきなのです。
未来の話
そもそも残業代を出さない方法で解決しようとするから、様々な矛盾が出てきます。働いた分の賃金を払わない方法を探ることに無理があるのです。
まず、残業代を支給して仕事を明確にすること。そのうえで残業代を限りなくゼロにすること。残業代支給に伴って、より仕事が精選されるようになること。
これが、これからの学校現場のあるべき姿なのではないでしょうか。
最後に、今回の私の考えに賛同いただける方は、SNS等で
# 教員の超勤問題を労基法違反で訴える
のハッシュタグで拡げていただけると、とても有り難いと思っています。
宜しくお願いいたします。
元高校教員です。田中先生の勇気ある問題提起に心を揺さぶられています。誰かがやらねばならなかったことをやられてるのだと思います。第一回公判から傍聴させて頂き、先月は川越地区での私たちの「教育を考える市民の会」に来て頂きました。先日の第三回公判にはその会から2名の仲間が傍聴に行こうといい3人で参加することが出来ました。田中先生の投げられたボールを受け止めるものが増えてゆくと思います。最後まで応援しながら、考え続けたいと思います。