#2 訴訟を起こすまで

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため無賃残業訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「訴訟を起こすまでの経緯」について書きます。

訴訟を起こすまで

訴訟を起こすことを考えている学校教員はあまりいないと思います。私も同じでした。何しろ訴訟の起こし方などわかりません。

不合理なことで納得できない場合には、仲間に訴える、組合に訴える、管理職に訴える、教育委員会に訴える、人事委員会に訴える、裁判に訴えるなど、色々な方法が考えられます。

しかし今回、本位ではないものの、裁判という手段を選ばざるを得ませんでした。全国の学校を変えていくためです。

労働基準監督署に相談するも・・・

裁判に至る経緯を少しお話しします。

過去10年間を振り返ってみます。学校を異動すると、そこでは自分の立場はどうしても下がります。いきなり自分の思いは主張できません。学校の様子に合わせるしかありません。勤務時間前の登校指導を強要されても従うしかありません。PTA活動で休日出勤も従うしかありません。それが約10年前の出来事です。

私は、はじめ、労働基準監督署に電話で相談しました。平日の休みはないので、土曜参観日の振り替えがチャンスでした。結果は、「あなたは公務員なので人事委員会に相談して下さい」ということでした。労働基準監督署に電話をするだけでも相当な勇気が必要でした。その時は、人事委員会は教育委員会にあると聞き、同じ仲間同士に言っても意味がないだろうと思っていました。

3年前、再び異動がありました。この学校では、勤務時間前の登校指導が月に1回、休憩時間には下校指導までありました。休憩時間に特別活動が入っていても当たり前、倫理確立委員会という会議も開催されていました。また、ほとんどの教員が登校指導等のために勤務開始時間1時間前に出勤していました。

年々、時間外労働が増えていきました。

記録をとるように

異動を経験して、教員の超過勤務問題は一つの学校での出来事ではないこと、年々状況が酷くなっていくなどが分かり、自分の勤務校だけを良くするだけでは意味がない、日本全国の学校を変えられないか、と思うようになりました。

自分達の世代で無賃労働は終わりにさせよう。

この頃からノートにメモを取るようにしました。

まず、出勤、退勤時刻を毎日記入しました。そして、簡単な残業内容も記入しました。さらに、不合理だと思う時間外労働に対して感じることをメモするようにしました。

弁護士探し

裁判に訴えるために労働問題を専門とするインターネットで調べて、弁護士を探しました。「依頼者の皆様にとって身近な存在として、あらゆる問題に真摯に取り組みます」というコメントを見て、若生直樹弁護士に決めました。

メールでの連絡を通して、2018年3月に初めて若生弁護士にお会いしました。

私からは、訴訟を起こしたい趣旨・内容をお話しして、若生弁護士からは、訴訟の方法・費用・準備することなど詳しく教えていただきました。そのやりとりの中で、私はその日に契約をする決心をしました。

訴状の作成・提出

その後、自分が考えてきたことを文章にして持って行きました。

そして、若生弁護士とメールなどで裁判で訴える内容や必要な書類について打ち合わせを重ね、裁判所に最初に提出する「訴状」の形にまとめました。

9月25日、作成した訴状をさいたま地方裁判所に提出しに行きました。若生弁護士と裁判所入り口で待ち合わせをして、一緒に中に入りました。書類を出して、終わりです。

その後は、裁判所の目の前にある埼玉県庁記者室で記者会見をしました。新聞各社マスコミから質問を受けました。自分の考えをしっかりとまとめて、主張がぶれないように気をつけました。

そのとき取材を受けた記事です。

時間外勤務の手当支払い求め小学校教諭が県を提訴 埼玉【産経新聞2018年9月25日】

教員「働かせ放題」許せず提訴 定年間際「次世代に引き継げない」と覚悟の裁判【弁護士ドットニュース2018年10月28日】

お読みいただきありがとうございました。次回は裁判が始まってからの出来事について書く予定です。