現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超勤訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。
今日は、「時間外勤務命令がなくても残業になる」という考えについて書きます。
命令と残業は関係ない
私が起こしている裁判では、残業が存在しないことを示すために県教育委員会は次のように主張しています。
「校長から原告に対して時間外勤務命令を行ったことはない」
「教員が正規の勤務時間外に勤務していることを認識していることをもって、校長が教員に時間外勤務を命じていることにはならない」
これらの主張をみると、埼玉県教委は、校長による勤務命令があれば残業が成立するという認識のようです。だから、「勤務命令は行っていない」と繰り返し主張するのだと思います。
しかし、私は時間外勤務命令は残業とは関係ないと考えています。
使用者の関与と業務性があれば残業になる
過去の『三菱重工業長崎造船所事件』という裁判の判例をみると、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間、または使用者の明示・黙示の指示により業務に従事する時間とされています。
つまり、労働(残業)にあたるかどうかは「使用者の関与」と「業務性」を判断要素として客観的に定まる、ということです。
時間外勤務命令は関係ないのです。
残業と認めるのが妥当
では、私たち教員の超過勤務は、使用者(校長)の関与と業務性があると認められるものなのでしょうか。
具体例を挙げてみます。今回は、以前も例に出したテストの採点で考えてみます。
まずは、「使用者の関与」です。
校長は私が勤務時間終了後も退勤せずにそのまま職員室でテストの採点を行っていることを知っていて、にもかかわらず黙認している状態です。これは、労働者(私)が使用者(校長)の指揮命令下に置かれているといえるでしょう。
次に、「業務性」についてです。
私の裁判では、埼玉県教委はテストの採点について『教員の本来的業務』と認めています。よって、業務性があるといえるでしょう。
このように一つひとつの仕事の内容を吟味していけば、教員が行っているほとんどの時間外の業務は、労働(残業)と認めるのが妥当ではないのかと私は考えています。
今後、裁判では一つひとつの時間外の業務に対する「使用者の関与」と「業務性」を所要時間とともに問うていくつもりです。