現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。
今日は、「45時間ガイドライン」についての所感を書きます。
働き方改革法に合わせた月45時間上限
全国各地の教育委員会から教員の働き方改革として「45時間ガイドライン」に取り組むことが発表されています。
都教委 時間外の上限を月45時間、年360時間に設定
(出典:教育新聞2019年5月23日)
これは、これまで無定量に労働時間が増え続けていた教員の働き方改革として文科省が1月に打ち出した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」をもとにしたものです。
なぜ残業上限が月45時間なのかというと、民間労働者を対象とした『働き方改革法』の残業上限が月45時間だからです。
教員は『働き方改革法』の対象ではありませんが、この法律に残業上限を合わせたのです。
教員には残業代が出ない
同じ残業月45時間でも、教員と民間労働者には、一点、大きな違いがあります。
それは、民間労働者には支給される残業代が、教員には支給されないということです。
つまり、このガイドラインの意味するところは、「教員には残業代は出さないが、45時間までは残業をするように」ということなのです。
この点について、私は明らかにおかしいと思っています。
給特法によれば、超勤4項目(修学旅行・災害対応などの4つの仕事)を除き、教員については次のように時間外勤務は一切命じないことが原則として定められています。
教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。
(出典:公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)
にもかかわらず、このように月45時間の残業を許容する取り組みを提示する文科省はどういった論理を根拠としているのでしょうか。
超勤4項目外まで「包括」するという解釈
文科省はいわゆる「包括解釈」を採っています。
どういうことか。
(本来、存在させてはならないはずの)超勤4項目以外の時間外労働についてまで、(超勤4項目に対応にしているはずの)教職調整額を支給しているのだから問題ない、教職調整額は超勤4項目外の業務までを「包括」して評価している、という論理です。
これまで教員の残業について、「教員の自主的活動」であり、労働ではないという立場を採ってきましたが、最近は「超勤4項目外の業務についても、勤務時間を超えることもある」としているのです。
なお、私の裁判でも埼玉県教委は、文科省のこの理屈を下敷きにして答弁してきています。
教員の職務及び勤務態様の特殊性を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果として「教職調整額」を支給している趣旨からすれば、教育職員の勤務が正規の勤務時間外に及ぶことがあったとしても、そのような勤務の存在は、給特法の前提とするところであって、これを否定するものではない。
(出典:埼玉県教員超勤裁判 埼玉県教委答弁書)
残業時間と残業代の整合性
百歩譲って包括解釈がまかり通るとしましょう。教職調整額が超勤4項目外の業務の残業代までを含むものとしましょう。
しかし、教職調整額と残業時間の整合性もとれません。
教職調整額の給与の4%という額は、1971年の給特法制定当時の月10時間程度の残業をもとに決められたものです。
つまり、百歩譲って包括解釈が成立するとしても、本ガイドラインは「月10時間程度の残業代で月45時間働かせようとしている」ことに他ならないのです。
職業差別
教員の業務は”特殊”であるとして、残業代が出ません。
しかし、本当にそうでしょうか。
超勤4項目を除けば、教員の労働と民間労働者の労働に差異はないのではないでしょうか。
残業させたいのであれば、労基法に則り残業代を出す、なぜこのようなシンプルなことが教員にだけ適用されないのでしょう。
合理的な理由がなく、教員だけに残業代を出さないことについて、私は『職業差別』だと考えます。