#29 判決の問題点9つ


先日、最高裁から上告棄却の連絡があり、埼玉教員超勤訴訟の終了しました。

改めて、ここで本訴訟の判決の問題点を書きます。

①時間管理が不能という点

自立的な職務と指揮命令に基づく職務が日常的に渾然一体になっているため、時間管理が不能であるという判決。高プロ労働者でさえ、労働時間管理義務は課せられています。なぜ教員には労務時間管理義務が課せられていないのでしょうか。私立学校国立付属小学校は勤務時間管理可能で公立学校は渾然一体とする根拠不明が問題です。

②校長の職務命令があったかどうかにすり替わった

原告の超過勤務の認定に対して、時間外勤務を命じることができない超勤4項目以外の仕事であったのかどうかの判断ではなく、校長の職務命令があったかどうかの判断にすり替わってしまっていたことが問題です。

③勤務時間前について

登校指導や朝会時の集合などは明らかに時間外勤務でした。しかも常態化していました。これが国賠法上の違法とならないのが理解できませんし、問題です。

④割り振りは事実上不可能

さらに勤務の割り振りが不可能なほど時間外勤務が常態化しているのにもかかわらず、それに対する処置を怠っている行政に問題があります。

空き時間について

360時間の時間外勤務を認定しておきながら、空き時間にできたはずといういきなり判決に問題があります。原告の空き時間については職務専念義務が課せられていました。しかも空き時間についての原告の仕事状況については全く議論されていませんでした。原告の勤務時間内における自身の仕事についての詳しい説明を求められないままに仕事に携わっていた空き時間を判決に利用されたことは遺憾です。

⑥休憩時間について

教員の休憩時間についても同様です。原告の休憩時間に児童の指導、会議研修等仕事に携わっていた事実が認められています。しかし、それも全ての勤務時間の合算として処理されて判決が出されています。休憩時間が労基法上の休憩時間として裁判で認められていません。私は、歴史的大問題判決だと思っています。

⑦生活時間の軽視について

労働基準法違反に対する判断が、健康や安全確保に限られており、生活時間の確保がおろそかにされているという問題です。

⑧法解釈ばかりに終始した裁判所

教員の時間外勤務は明らかな事実です。自主的かどうかを判断しているのではなく、法律上の理論ばかりに終始している裁判所の在り方に問題があります。

⑨給特法が強者に利用されていることを理解しない裁判所

法律は弱者を保護するために作られているはずです。給特法もそうです。それが強者に利用されている現状を裁判所が理解できていないことに問題があります。

#28 私が「給特法廃止=長時間労働の解決」と楽観的になれない理由

今日は、給特法についての私の考えを記したいと思います。

給特法以前の問題がある

今、長時間労働を改善しようとする教員から給特法の廃止(あるいは改正)に向けた動きがあります。民間労働者同様、残業代を出させる法律に適用させることで、それを長時間残業の歯止めにするという考え方だと思います。その方向から本当に残業が抑制されるのであれば、それは素晴らしいことです。

しかし、私にはそう楽観的にはなれないところがあります。給特法廃止反対というわけではありませんが、「給特法廃止=長時間労働の解決」とは思えないのです。

なぜなら、それは給特法以前の問題があると考えているからです。

その問題とは、私の裁判でもみられるように、教委は教員が時間外勤務をしても、「学校長が命じていない」「教員の自主的な活動」と言って、労働そのものの存在を認めないことです。その証拠に本来、現給特法下においても「時間外勤務に対しては調整(勤務時間の割り振り)をしっかり行う」ことが必要にもかかわらず、実態はほとんどのケースにおいて時間外勤務が生じても労働の存在が認められていません。

つまり、給特法が廃止され、残業代を出さなければならない法律が適用になるからといって、労働(残業)の存在が認められるかどうかは、もう一つハードルが存在する可能性があるのです。

ですから、給特法廃止がすぐに長時間労働の解決に結びつくとは限らないというのが今の私の考えです。給特法以前の問題として、まずは教員の時間外勤務が労働として認められるかどうか、これが最大の問題と考えています。

いずれにしても時間外勤務が労働として認められる必要がある

私は、教員の時間外勤務が労働として認められるには、超勤4項目以外の教員の時間外勤務の在り方を明確にしていくこと=労働として認めることが必要と考え、裁判を起こしました。

しかし、残念ながら現状は大変厳しく、高裁の判決において、

超勤4項目に限らず、教員のあらゆる時間外での業務に関し、労基法37条の適用(8時間を超える労働に対する残業代の支給)を除外すると解するのが相当である。

とされ、これまでのところ従来からの包括論的解釈(※1)が支持される結果となっています。

※1 直接的な命令がなければ4項目に限らずその他の業務も時間外に行わせてもOK、それはあくまで教員の自主性によるものという解釈

ですが、給特法をそのまま生かすにせよ、廃止するにせよ、この包括論的解釈をきちんと否定することが必要不可欠と私は考えます。そうしなければ、結局のところ、残業が労働として扱われずに「自主的活動」とされてしまうのは同じだからです。超勤4項目以外の時間外勤務の在り方を明確にし、労働として認めることが何より重要なのは給特法の有無によって変わらない、そう思って裁判に臨んでいます。

この包括論的解釈をきちんと否定したうえで、「超勤4項目以外の仕事を命じられない」ことを使用者側にしっかりと守らせる仕組みづくりが必要なのだと思います。

教員の時間外勤務が労働として認められることが最重要

私が、「給特法廃止=長時間労働の解決」と楽観的になれない理由、ご理解いただけたでしょうか。

私は、「超勤4項目以外の時間外勤務が労働として認められること」、これが最重要ととらえています。

皆さんもこのことについて、一緒に考えていただければ幸いです。

#27 改めて教員の仕事は本当に「自主的」ですか?

いつもご支援ありがとうございます。

昨日、東京高裁より「棄却」の判決が出ました。

判決文(PDF)については、こちらよりご覧いただけます。

今日は、判決を受けての私の思いを述べます。

テストの丸つけは仕事にあたりませんか?

現場の教員たちは、無賃で超長時間労働をさせられています。

(勤務時間後の)児童生徒が行なったテストの丸つけは、仕事にあたらないのでしょうか。

(勤務時間後の)授業の準備は、どうでしょうか。

(勤務時間後の)欠席児童への連絡は?

(勤務開始前の)朝の登校指導は仕事ではありませんか。

これらは、毎日のように行われている教員の仕事です。埼玉県教委ならびに裁判所は、これらの仕事を労働として認めず、教員が「自主的に」やっていることだとしました。

教員の仕事は本当に「自主的」ですか?

しかし、テストの丸つけ・授業の準備、欠席児童への連絡、朝の登校指導などは、本当に教員が「自主的に」やっていることなのでしょうか。

「自主的」かどうかは、本来、教員本人が決めることではないのでしょうか。

しかし、現場の教員たちは、教委ならびに裁判所から「自主的なこと」だとされ、夜遅くまで働かされているのです。

どう考えてもおかしいと思いませんか。

この仕組みは誰が作ったのか。

長い長い年月の間に、日本社会が作ってしまったのです。

午後7時過ぎ(休憩時間なしで既に労働開始12時間経過)に近くの学校に行って見てください。大勢の教員が職員室や教室で丸付けをしています。授業の準備をしています。欠席児童への電話連絡をしています。

これらは全て無賃です。残業代がつかないから残業に歯止めがききません。

昨日の高裁判決で、勤務時間外の丸つけが、授業準備が、欠席児童への連絡が、労働ではなく。教員の「自主的なこと」だと再度確認されてしまいました。

これらは本当に仕事ではないのでしょうか。

これらの仕事が労働として認められずに、遅くまで働かされることを知ったら、あなたは教員の仕事を選びますか。自分の子どもを教員にしますか。周りの人たちを教員にしますか。

今、教員が足りない問題は、このようなことが大きく関わっています。

あとは最高裁のみ


昨日の判決結果で、あとは最高裁判所の判断に頼るしかなくなりました。

最高裁に向けて、私もひと踏ん張りします。

ですから、みなさんももう一度考えてみてください。

「これからもこのままでいいと思いますか」

みなさんひとりひとりが考えてほしい。私はそう思っています。

最後に、今日まで田中まさおをご支援いただきました方々、本当にありがとうございました。皆様のおかげで今日までやってこれました。励まされてきました。

改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。

いつもご支援いただきありがとうございます

twitter@埼玉超勤訴訟 田中まさお

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#26 高裁判決後の記者会見

現場の先生たちは確実に働かされています。
児童生徒が行ったテストの丸付けは仕事に当たりませんか?
授業の準備は仕事に当たりませんか?
欠席児童への連絡、これは仕事ではないですか?
朝の登校指導は仕事ではありませんか?
 
これらは毎日のように勤務時間外に行われている教員の仕事です。裁判所はこれらの仕事を労働として認めず教員が自主的にやっていることだとしています。
 
テストの丸付けは仕事ではなく教師が自主的にやってることですか?
授業の準備は、仕事ではなく教師が自主的にやっていることですか?
欠席児童への連絡は仕事ではなく教員が自主的にやっていることですか?
朝の登校指導はどうですか?
現場の先生たちは裁判所から自主的だと言われて遅くまで働かされているのです。
 
どう考えてもおかしいと思いませんか。
これらの仕事が仕事として認められないで、遅くまで働かされることを知ったらあなたは教員の仕事を選びますか?
自分の子どもを教員にしますか?
周りの人たちを教員にしますか?
 
今、教員が足りない問題はこのようなことが大きく関わっています。
私は今日の判決結果で、あとは最高裁判所の判断に頼るしかありません。

#25 健康被害はなくても「生活時間の侵害」を受けている

東京高裁での第二回控訴審においては、労働法の専門家・毛塚勝利先生に書いていただいた『鑑定意見書』を提出しました。

今回は、『意見書』のなかから特に重要なテーマの一つ、「生活時間の侵害」について書きます。

生活時間の侵害

一審判決では、敗訴の要因の一つに私自身が健康的な被害を受けていないということがありました。

しかし、毛塚先生は私も被害を受けていると書いてくださいました。それが「生活時間の侵害」です。

毛塚先生は次のように書いてくださいました。『意見書』からの抜粋です。

「教員の生活時間を侵食していること自体が、労働時間管理義務を怠り法定労働時間遵守義=生活時間配慮義務を怠っていることによる法益侵害なのであるから、国賠法上の違法性を認めて然るべきなのである」

「原告が被った損害としては、過重負担による肉体的精神負荷の増大にかかる損害のみならず、家庭人や市民として健全な家庭生活や社会生活を送る時間、また、教員として自己研鑽をはかる時間、つまり生活時間が侵害された精神的被害をも考慮することが求められる」

「労基法の法定労働時間の遵守は、健康配慮義務の観点以上に生活時間配慮義務の観点からより厳格に労働時間管理が求められると解しうる。1時間の限度時間超えはそのまま1時間の生活時間の侵食を意味するからである」

「労働法における労働時間規制の意味をもっぱら賃金確保や健康安全の確保の観点からのみ捉えてはならないこと、とりわけ生活時間の確保の観点から捉えることが肝要である」

1時間の残業は1時間の「生活時間の侵食」

毛塚先生の「1時間の残業は、そのまま1時間の生活時間の侵食を意味する」という指摘は大変重要です。

1時間の残業は単なる労働時間の増加なのではなく、1時間の生活時間の減少を意味する…、つまりそれだけ生活が侵害されているということです。

何も健康被害がないからといって許されるものではない、ということです。

振り返れば、私自身、長時間労働が慢性化してから、私は何年もの間、家庭での時間、余暇、趣味、友人関係、読書の時間など(教材研究でさえ)生活時間を奪われてきました。

家庭では家族との過ごす時間がなくなり、友人関係にいたっては消滅してしまった関係もあります。また、病気にはなっていないものの、休日は疲れ切っていて、余暇やレジャーなどは他人事になってしまいました。

私同様に、大勢の教員が健康被害まではいかなくても、「生活時間の侵害」を被ってきたのではないでしょうか。

学校現場が1日8時間の労働時間規制を遵守し「生活時間の確保」がしっかりとなされる職場になるような、その後押しとなる判決が出ることを強く望んでいます。

高裁判決は8月25日です。

なお、『意見書』全文はこちらからお読みいただけますので、ぜひお読みください。

#24 控訴審開始にあたり、田中まさおの思い

東京高裁での控訴審の開始が決定しましたので、お知らせいたします。

控訴審開始にあたり、私の思いも記述いたしますのでお読みいただけたら幸いです。

控訴審開始にあたり

埼玉県小学校教員の田中まさお(仮名)です。

いよいよ控訴審が始まります。宜しくお願いいたします。

 

文科省の働き方改革には本気度が足りない、この思いは私だけでしょうか。

私は、今から3年半前に埼玉県教育委員会を相手に訴訟を起こしました。教員の長時間(無賃)残業を是正するためです。しかし、2021年10月に出された埼玉地方裁判所の判決は、棄却でした。そのため、東京高等裁判所に控訴をしました。

教員の時間外勤務は全て無賃です。いくら働いても残業代は支給されません。そのために残業時間が抑制されない構造になっています。

小学校の教員は、朝の登校指導から始まり、コロナ禍による教室の消毒、窓の換気等をやらなくてはなりません。これらの仕事は勤務時間に収まらないことが往々にしてありますが、子供たちのためにはこれらの仕事に携わらずにはいられません。また、児童が帰った後にも莫大な仕事が課せられています。次の日の授業の準備はもとより、テストやプリントの丸付け、宿題や提出物の確認、様々な書類の提出等、仕事を挙げたらきりがありません。1日12時間以上の労働を強いられる教員も少なくありません。残業代なしで、です。

残業代が支払われないのにもかかわらず(というより管理職側からみれば残業代を支払う必要がないから)次から次へと仕事が要求されてきます。しかし、私はもうこれ以上は働けません。先日報道された、教員不足2500人のニュースはそれが私だけの問題ではないことを表しています。ですから、私はこの状況を次代を担う若い教員に引き継いではならない、そう考え、訴訟を起こしています。

冒頭に述べたとおり、文科省の働き方改革には本気度がありません。それは基本的な考え方に誤りがあるからです。文科省の考えは、時間外労働を教員の勤務(労働)ではなく、あくまですべて教員が「自主的に」行っている行為である、というものです。しかし、そもそもある労働について「自主的」に行ったかどうかを判断するのは、本来労働者であるはずではないか、というのが私の考えです。「自主的」という前提があるために、文科省の働き方改革では、本来の働き方改革の趣旨である「業務量の改善」や「労働基準法の遵守」などに手をつけられることがないのです。

確かに、私が訴訟を起こしてからのこの3年半の間で、職場にタイムカードが設置され、月45時間以上の勤務について学校長への啓発が行われるようになりました。それは僅かな前進かもしれません。

しかし、これは逆に言えば、月45時間までは無賃のまま働かせても問題ない(教員の「自主的」活動とする)ということでもあります。文科省はどのような法的根拠に基づき、月45時間残業代を支給せず働かせても良いと考えているのでしょうか。

田中まさおはこの考え方に真っ向から反対しています。45時間残業代ゼロの考え方を私は決して受け入れることができません。それは法的根拠があるものではなく、労働基準法に違反するものであるからです。教員も一般労働者と同じように、8時間を超える労働に対しては、残業代が支給されるべきです。(あるいは労働基準法が遵守され、8時間を超える労働をさせられるべきではないのです。)

本来、文科省のあるべき働き方改革は、まずもって「教員の時間外勤務を労働として認めること」と私は考えます。本訴訟は文科省にそのことをきちんと認識していただくための訴訟なのです。

田中まさおは、教員の時間外勤務が決して教員の自主的なものではなく、れっきとした労働として認められるものだということを控訴審でも訴え続けていきます。

 

詳しくは下記に添付する(裁判所に提出する)『控訴理由書』にも記載していますので、お時間があるときにお読みいただけたら幸いです。

それでは、3月10日より、東京高等裁判所における控訴審が始まります。引き続きのご支援を宜しくお願いいたします。

2022年2月13日 埼玉県教員超勤訴訟 田中まさお(仮名)

控訴理由書

控訴理由書(1)

いつもご支援いただきありがとうございます

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#23 地裁判決を受け、控訴のご報告

日頃より皆様のご支援・応援に感謝申し上げます。

先日、2021年(令和3年)10月1日に、2018年9月にさいたま地裁に提訴した超勤訴訟の地裁判決が出されました。判決につきましては、一部過去の裁判では労働として認められなかった仕事について労働と認められた部分があったものの、全体を通じては『敗訴』という結果になりました。私自身の力不足を痛感しております。

(判決概要・判決文全文はこちらのページでご覧いただけます)

私は裁判を通じて、毎日3時間を超える無賃の時間外労働を強いられている現状のなかで、労働基準法32条(8時間を超える労働をさせてはならないという法律)違反を訴えてきました。しかし、地裁判決は過去の教員裁判同様、「拘束するような形でなければ許される」という判決でした。原告としては、到底容認できるものではなく、控訴の手続きを行いました。

今回の判決を振り返り、所見を述べさせて頂きます。

現在の教育現場の実情を鑑みると、給特法の制定根拠とされていた、教員が自主的・自発的に業務に従事するという「職務の特殊性」、長期の休業期間があるという「勤務形態の特殊性」は、ほとんど存在しなくなったと考えております。そのため、教員の自主的で自律的な判断に基づく業務のために厳密な労働時間管理ができないなどとする理由は全く受け入れられません。そもそも、ある労働について「自主的」に行ったかどうかを判断するのは、本来労働者であるはずです。使用者の都合によって「自主的」に行ったかどうかが判断される以上、その労働は使用者によって「強制」されたものといわざるを得ないのでしょうか。いわば、教員の労働は『自主的という名の強制労働』に当たるのではないかというのが私の考えです。

このような労働が実際に存在する現状を容認するような判断は、国際社会では到底通用しないことでしょう。教員の時間外勤務は「自主的労働」か「強制労働」か。本控訴審が、日本のみならず世界中から注目される裁判になることを望んでいます。裁判所においては、国際社会に誇れるような、公平・公正な判断を心から望む次第です。

田中まさおは、学校教員の長時間労働抑制のため、法に基づいた働き方をしていくことができるよう、訴訟を通じて尽力していきたいと考えています。引き続きのご支援・応援をいただけますことを願っております。宜しくお願い申し上げます。

2021年(令和3年)12月12日 埼玉超勤訴訟 田中まさお(仮名)

 

twitter@埼玉超勤訴訟 田中まさお

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#22 職員会議で決められたことは「校長に命じられた業務」を意味する理由

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「職員会議で決められたことは校長に命じられた業務」である理由について書きます。

理由1:職員会議は教職員間の協議に基づき、各教職員が自主的に協力するという性質のものではなくなった

平成12(2000)年、学校教育法の改正で施行規則48条で、職員会議の位置付けが変わりました。改正により、職員会議は、学校の管理運営に関する校長の権限と責任を前提として、校長が主宰し、その職務の円滑な執行を補助する機関として位置づけられたのです。

改正学校教育法施行規則48条

・小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる。
・職員会議は、校長が主宰する。

また、文部科学省からは、上記法令の趣旨を徹底させるため、平成26(2014)年6月27日付で、職員会議の運用について、以下2点を内容とする通知が出されました。

①教職員の互選等により選ばれた議長団等の組織を設置し、校長以外の職員を議長とし、当該議長が職員会議を主宰することは、校長の権限を実質的に制約することから不適切であり、行うべきではないこと

②挙手投票等の方法により、校長が自らの権限と責任において決定すべき事項について決定したり、校長の権限を実質的に制約したりすることは、法令等の趣旨に反し不適切であり、行うべきでないこと

そして、上記に反する規程や慣行が存在する場合には、速やかに規程や慣行の廃止・修正や学校への指導を行うことを各教育委員会に求めています。

このように、平成12年の改正により、職員会議の性質は大きく変化しました。それまでは挙手や投票など教員の意向が反映される場でしたが、この改正以降、職員会議は教員が話し合いや多数決によって決定する場ではないことが明確となったのです。

職員会議によって決定された事項は、教職員間の協議に基づき、各教職員が自主的に協力するという性質のものではなく、校長が自らの権限と責任において決定した「校長による業務命令」の性質を有しているものなのです。

理由2:たとえ直接的に校長の提案でなくても、承認・決定しているのは「校長」

また、職員会議を経て決定される事項については、校長に任命された「○○主任」を中心とする「○○部会」といった、校務分掌で割り振られた組織・役職によって、会議資料の作成や具体的な業務の提案が行われることが多いと思います。

これらは、学校運営を円滑に行うために校長から任命された職務です。つまり、校長の補助機関としての法的性質を有しています。

各機関では、校長の指導の下、校長の意向に沿った形で種々の業務の計画立案を行い、職員会議において提案が行われます。そして、提案された業務を校長が承認・決定することで、教員の仕事が作り出されます。

したがって、校務分掌で割り振られた組織・役職名により資料の作成や業務の提案が行われていることは、職員会議を通じて各教員に割り当てられた業務が校長によって命じられた業務であることを否定する事にはなりません。

たとえ校長が「命令する」「命じる」という言葉を用いなかったとしても、職員会議で決められたことは教員にとって校長に命じられた業務を意味する、ということです。

#21 教員の働き方改革において人を増やすことは解決方法にならないのではないか

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「教員の働き方改革の解決方法」について書きます。

人を増やすか、仕事を減らすか

教員の働き方改革について、よく「人を増やすか、仕事を減らすか」と言われます。

しかし、結論からいうと、私は人を増やすことは抜本的な解決方法にはならないのではないかと思っています。

つまり、仕事を減らすしかないと考えています。

人を増やすことが解決方法にならない理由

確かに、仕事量が一定であれば、人を増やすことで改善が図れるでしょう。

しかし、いくら人を増やしたところで、仕事量の上限の定めがなければ(あるいはあったとしても形骸化していれば)、人が増えたところで仕事も増えてしまい、意味がありません。

実際、労働基準法で定められた1日8時間という上限があるにもかかわらず、現実には形骸化しているのが学校現場の実情です。

校長の労務管理を充分な権限により指導・監督する機関がなく、教育の仕事には終わりがないからです。

いわば現状は、校長の”仕事増やし放題”が許されている状況にあるのです。

解決方法は仕事を減らすこと

教員の働き方改革によって、何より重要なことは「仕事を減らすこと」に他なりません。

具体的には、

  • 文科省の仕事は「教師の仕事」と「そうでないもの」を明確に打ち出し周知すること、
  • 各教育委員会はの仕事はその実現を図り、校長の労務管理を監督・指導すること、
  • 各人事委員会は、民間の労働基準監督署と同様に監督・指導を行うこと
  • 学校長の仕事は労基法を遵守し、しっかりと労務管理を行うこと、
  • 教員は他の仕事の安請け合いをせず、教師の仕事に集中し、労働者としての権利を校長に求めること

などを行っていくことが必要なのではないかと私は考えます。

以上のように、教員の働き方改革の解決方法は、校長の”仕事増やし放題”を規制し、仕事量を減らしていく、これしかないのです。

#20 教員が17時以降に行っている53の仕事

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「教員が17時以降に行っている仕事」について書きます。

『担任教師の毎日の勤務状況』

先日の第5回裁判で私は、勤務時間内を大幅に上回る仕事量を与えられている、その根拠として『担任教師の毎日の勤務状況』を示しました。

この『担任教師の毎日の勤務状況』は、各時間ごとに教員が行っている仕事を箇条書きにしてまとめたものです。

(裁判所に提出したものは、こちら(PDF)から見ていただくことができます)

教員が17時以降に行っている53の仕事

今日はこのなかから、勤務時間外の17時以降に行っている仕事について取りあげます。

私が一つひとつの仕事を挙げていった結果、教員は勤務時間外に53もの仕事を行っていることが明確になりました。

以下、その53の仕事です。

  1. 教室の整理整頓
  2. 掃除用具の確認
  3. 落とし物整理
  4. 教室の点検修理
  5. 教室の掲示物の管理
  6. 掲示物のペン入れ
  7. 作文のペン入れ
  8. 教室の掲示物作成
  9. 翌日の授業の準備 (教材研究等) 整理
  10. 提出物の確認
  11. 朝自習の準備
  12. ドリル・プリントの丸付け
  13. 出席簿の整理
  14. 保健関係の仕事
  15. 日直の仕事
  16. 週予定表や学級便りの作成
  17. 週案簿の作成
  18. 草取り
  19. パトロール
  20. 学級・学年会計
  21. 通知表の作成
  22. 自己評価申告シートの作成
  23. 校内研修指導案提出
  24. 指導訪問指導案提出(2年に1回)
  25. 学年便り作成
  26. 遠足宿泊学習資料作成・準備
  27. 非行防止教室・図書館教室・交通安全教室等の申込み・実施計画作成
  28. 児童理解研修資料作成
  29. チャイム教室のプラン作成・親への連絡
  30. 家庭訪問の計画表作成 ・実施
  31. 児童調査票確認
  32. 緊急連絡網作成
  33. 学級懇談会実施・懇談会資料の作成
  34. 授業参観の準備
  35. 安全点検
  36. 学校からの手紙配布のための綴込み
  37. メール登録の確認
  38. 学校行事の準備 準備(2年に1回)
  39. 児童の様子をウィンバードへ記入
  40. 保護者への対応
  41. 指導訪問前の の添削
  42. ノート点検
  43. 指導要録作成
  44. ノート等の添削
  45. 授業で行った作業
  46. 賞状の作成
  47. 児童相談
  48. 校内巡視・カギ閉め
  49. 扇風機の清掃とビニールかけ
  50. エアコンスイッチ入切記録簿提出
  51. 教室のワックスがけ
  52. その他
  53. 「超勤4項目」に該当する仕事

勤務時間外にこれだけの仕事をしながら、教師には残業代が出ません。

私の裁判は、教員にも残業代が支給されるようになることにより、教育行政・校長に仕事量を抑制するインセンティブを与えようとするものです。

私の裁判や教員の働き方について、興味をもっていただけたらと思います。

※教員の皆様へのお願いがあります。私が上記に挙げた53の仕事以外にも、17時以降に行っている仕事があれば教えてください。よろしくお願いいたします。