#19 給食時間中に事務作業をすることは不可能である

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、先日の第5回裁判で私が主張した、「給食時間中に他の事務作業はできない」ことについて書きます。

埼玉県の答弁

埼玉県教委は、第1回裁判で、教員の仕事は勤務時間内で十分に収まるものであり、『給食指導中においても事務作業をすることが可能』と主張しています。

給食指導や清掃指導が不可欠な事は確かであるが、給食や清掃の作業は高学年になるにしたがって児童に任せられる部分が多くなり、時間中、常に児童に対する指導業務に従事する必要がなくなる。教員自身が給食を食べ終わった後、児童の様子を時々観察しながら、事務作業をすることも可能であり、実際に行っている教員もいる。(第1回裁判答弁)

私の主張

この埼玉県の主張に対し、先日の第5回裁判で私はそれは不可能であると反論しました。

なぜなら、「給食指導」のやり方は、校長が主宰する職員会議において、以下に述べるように非常に細かいルールが定められており、教員にはかかるルールを遵守し児童を指導することが命じられており、他の事務作業を行う余地などないからです。

命じられている給食指導のやり方

①給食配膳中は児童に無言で配膳させなければならない。

②給食は、配膳室から教室前の廊下まで、教員がワゴンを運ぶことになっている。さらに、熱い食缶は、児童には運ばせず、教員が配膳台の上に置くことになっている。

③アレルギー児童がいる場合には、除去食の配慮が担任教員の仕事である。除去食カードをチェックし、配膳をチェックし、カードを提出する必要がある。除去食対応は、少しの間違えも許されない、非常に責任の重い仕事である。

④給食の残菜についても、児童による残菜をできる限りなくすことが、校長からは求められている。校長は、給食室から毎日、残菜量の報告を受けているため、教員は、残菜をなくすことにも神経を注がなければならない。

⑤担任は、給食当番確認表のチェックも行う必要がある。担任は、毎日、給食着のチェック、手洗いのチェック、爪のチェック、病気のチェック等を行い、チェック後に担任印を押している。この確認表は、月末に学校に提出する必要があるため、チェックを怠ることは許されない。

⑥さらに、給食の片づけ方についても非常に細かいルールが決められており、教員は、食後の片づけ指導と片付けチェックを行う必要がある。担任は、食器の返し方、牛乳パックの折り方・ビニール袋への入れ方、ストローの返し方、ジャム袋・アルミホイル類・残菜等の処理の仕方等をその都度指導して、児童の片づけを毎日チェックする必要がある。

⑦そして、全てのチェックを終えた後は、担任自ら、配膳室まで給食のワゴンを運ばなければならない。

給食時間中に事務作業をすることは不可能

このように、給食時間中の給食指導は、校長によって命じられていた業務であり、「給食指導」の業務に集中しなければなりません。給食時間中に事務作業をすることは、不可能です。

詳しくは、第5回裁判資料に私の主張の全文があります。お読みいただき、SNS等で話題にしていただければ幸いです。

#18 授業準備の時間を与えられていないのにその授業を評価されるというおかしさ

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「授業準備の時間を与えられていないのにその授業を評価されるおかしさ」について書きます。

事務仕事が可能な時間は1日35分間しかない

私が勤務する埼玉県では、人事評価制度を導入しており、校長は教員の授業を見て、評価することが義務づけられています。

そして、その評価により、教員の給与が決まります。

そのような重要な評価にもかかわらず、私の勤務校ではその評価のもとになる授業の準備時間は確保されていません。(他の多くの学校でも同様ではないでしょうか。)

私の勤務校では、勤務時間内には1日35分間しか事務仕事をできる時間はありません。

〜16:00 児童の下校指導終了

16:00~16:20(20分間)事務仕事が可能な時間

16:20~16:45 休憩時間

16:45~17:00(15分間)事務仕事が可能な時間

17:00 勤務終了時刻

※私の裁判では埼玉県は児童の在校時間にも事務仕事は十分可能だと答弁してきていますが、ここで表した時間はそれは不可能であるという私の主張をもとにしています。

計、35分間です。

しかも、この35分間はあまり存在しない会議がない日でかつ保護者からの電話などの突発的な仕事が入らない条件下における時間です。

時間を与えられていないのに評価を下されるのはおかしい

言うまでもなく、授業の準備以外にも校務分掌や学級事務など教員の仕事は他にもたくさんあります。

つまり、実質的にこの35分間において、1日6時間の授業の準備を行うことは不可能です。

よって、学校における教員の評価は、「勤務時間外に行う仕事」をもとに校長により評価を下されている、ということです。

仕事を行う時間を与えられないのに評価を下されるという、このようなことが平気でまかり通っている学校の常識(校長のマネジメントの怠慢)に対し、『おかしい』ということが私の裁判の目的の一つでもあります。

#17 「公立学校教師の45時間残業ガイドライン」は職業差別である

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「45時間ガイドライン」についての所感を書きます。

働き方改革法に合わせた月45時間上限

全国各地の教育委員会から教員の働き方改革として「45時間ガイドライン」に取り組むことが発表されています。

都教委 時間外の上限を月45時間、年360時間に設定

(出典:教育新聞2019年5月23日)

これは、これまで無定量に労働時間が増え続けていた教員の働き方改革として文科省が1月に打ち出した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」をもとにしたものです。

なぜ残業上限が月45時間なのかというと、民間労働者を対象とした『働き方改革法』の残業上限が月45時間だからです。

教員は『働き方改革法』の対象ではありませんが、この法律に残業上限を合わせたのです。

教員には残業代が出ない

同じ残業月45時間でも、教員と民間労働者には、一点、大きな違いがあります。

それは、民間労働者には支給される残業代が、教員には支給されないということです。

つまり、このガイドラインの意味するところは、「教員には残業代は出さないが、45時間までは残業をするように」ということなのです。

この点について、私は明らかにおかしいと思っています。

給特法によれば、超勤4項目(修学旅行・災害対応などの4つの仕事)を除き、教員については次のように時間外勤務は一切命じないことが原則として定められています。

教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。

(出典:公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)

にもかかわらず、このように月45時間の残業を許容する取り組みを提示する文科省はどういった論理を根拠としているのでしょうか。

超勤4項目外まで「包括」するという解釈

文科省はいわゆる「包括解釈」を採っています。

どういうことか。

(本来、存在させてはならないはずの)超勤4項目以外の時間外労働についてまで、(超勤4項目に対応にしているはずの)教職調整額を支給しているのだから問題ない、教職調整額は超勤4項目外の業務までを「包括」して評価している、という論理です。

これまで教員の残業について、「教員の自主的活動」であり、労働ではないという立場を採ってきましたが、最近は「超勤4項目外の業務についても、勤務時間を超えることもある」としているのです。

なお、私の裁判でも埼玉県教委は、文科省のこの理屈を下敷きにして答弁してきています。

教員の職務及び勤務態様の特殊性を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果として「教職調整額」を支給している趣旨からすれば、教育職員の勤務が正規の勤務時間外に及ぶことがあったとしても、そのような勤務の存在は、給特法の前提とするところであって、これを否定するものではない。

(出典:埼玉県教員超勤裁判 埼玉県教委答弁書)

残業時間と残業代の整合性

百歩譲って包括解釈がまかり通るとしましょう。教職調整額が超勤4項目外の業務の残業代までを含むものとしましょう。

しかし、教職調整額と残業時間の整合性もとれません。

教職調整額の給与の4%という額は、1971年の給特法制定当時の月10時間程度の残業をもとに決められたものです。

つまり、百歩譲って包括解釈が成立するとしても、本ガイドラインは「月10時間程度の残業代で月45時間働かせようとしている」ことに他ならないのです。

職業差別

教員の業務は”特殊”であるとして、残業代が出ません。

しかし、本当にそうでしょうか。

超勤4項目を除けば、教員の労働と民間労働者の労働に差異はないのではないでしょうか。

残業させたいのであれば、労基法に則り残業代を出す、なぜこのようなシンプルなことが教員にだけ適用されないのでしょう。

合理的な理由がなく、教員だけに残業代を出さないことについて、私は『職業差別』だと考えます。

#16 教員の超勤問題は校長に責任がある

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は私の勤務校で行われている、「教員の超勤問題は校長に責任がある」ということについて私の考えを書きます。

第一義的な責任は校長にある

教員の超過勤務問題について、文科省や教育委員会に責任があるという声があります。

確かに学習指導要領を決定したり、各種調査の実施したりしているのは文科省や教育委員会です。私も彼らにまったく責任がないとは思いません。

しかし、現場の使用者、責任者はあくまでも校長です。

学校のことはすべて校長に決定権があります。私の考えでは、教員の超過勤務問題について、第一義的な責任は校長にあります。

文科省や教育委員会は毎日学校に居るわけではないし、仕事を減らすことができるのは校長だけだからです。

もちろん、法的にも校長には労基法や労働安全衛生法を守る責任があります。

教育委員会からの仕事は本来、校長が断るべき

文科省の教員を対象にした調査に、最も負担感のある仕事は何か、問うた調査があります。

結果は、「文科省、教育委員会から依頼される調査が最も負担感がある」というものでした。

本来、このような仕事に対して、教育委員会に対し校長は現場の使用者として、仕事を拒否するか、人員を要求するのが校長の仕事のはずです。

現場の使用者として労基法を遵守する責任がある校長に教員を働かすことができるのは7時間45分であり、それ以上の仕事をふられても困るのは校長のはずだからです。

しかし、現実には労基法を無視し、無定量に働かすことが常態化する労働文化のなかで、教育委員会の仕事を安請け合いし、追随する校長ばかりです。

 

労基法を無視し、無責任に教員を働かせる校長に対しては、もっと強く批判されるべきだと私は考えています。

#15 時間外勤務命令がなくても残業になる

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超勤訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「時間外勤務命令がなくても残業になる」という考えについて書きます。

命令と残業は関係ない

私が起こしている裁判では、残業が存在しないことを示すために県教育委員会は次のように主張しています。

「校長から原告に対して時間外勤務命令を行ったことはない」

「教員が正規の勤務時間外に勤務していることを認識していることをもって、校長が教員に時間外勤務を命じていることにはならない」

これらの主張をみると、埼玉県教委は、校長による勤務命令があれば残業が成立するという認識のようです。だから、「勤務命令は行っていない」と繰り返し主張するのだと思います。

しかし、私は時間外勤務命令は残業とは関係ないと考えています。

使用者の関与と業務性があれば残業になる

過去の『三菱重工業長崎造船所事件』という裁判の判例をみると、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間、または使用者の明示・黙示の指示により業務に従事する時間とされています。

つまり、労働(残業)にあたるかどうかは「使用者の関与」と「業務性」を判断要素として客観的に定まる、ということです。

時間外勤務命令は関係ないのです。

残業と認めるのが妥当

では、私たち教員の超過勤務は、使用者(校長)の関与と業務性があると認められるものなのでしょうか。

具体例を挙げてみます。今回は、以前も例に出したテストの採点で考えてみます。

まずは、「使用者の関与」です。

校長は私が勤務時間終了後も退勤せずにそのまま職員室でテストの採点を行っていることを知っていて、にもかかわらず黙認している状態です。これは、労働者(私)が使用者(校長)の指揮命令下に置かれているといえるでしょう。

次に、「業務性」についてです。

私の裁判では、埼玉県教委はテストの採点について『教員の本来的業務』と認めています。よって、業務性があるといえるでしょう。

このように一つひとつの仕事の内容を吟味していけば、教員が行っているほとんどの時間外の業務は、労働(残業)と認めるのが妥当ではないのかと私は考えています。

今後、裁判では一つひとつの時間外の業務に対する「使用者の関与」と「業務性」を所要時間とともに問うていくつもりです。

#14 『無言清掃』『無言給食』は教育なのだろうか

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は私の勤務校で行われている、「無言清掃、無言給食」についての私の考えを書きます。

若い教師は子どもを黙らせるのに必死

子どもたちに話を聞かせるために、沈黙をつくるのはものすごく大変です。

子どもたちは自分を表現したくて学校に来ているのですから、簡単には黙りません。しかも日本の学校は1クラス35~40人の子どもを一人の担任が担当しなくてならないのです。

ですから、若い教師たちは子どもたちを静かにさせるのに、とにかく必死です。

「一列に並んだら口を閉じようね」とか、「先生が頭の上で両手をクルクル回したら静かにしようね」とか…。

彼らのなかには教師の仕事は子どもを静かにさせることだと勘違いしてしまっている者もいるように私にはみえます。

『無言清掃』『無言給食』は本当の教育なのか

それに拍車をかけるのが、校長が指示する『無言清掃』『無言給食』です。

これらは、子どもたちに無言で清掃させたり、無言で給食を食べさせることを全校一致で強制させるものです。

確かにこのような取り組みを行えば、それらの場面で子どもたちは「黙る」ことになるでしょう。

しかし、清掃中・給食中に黙ることに何の意味があるのでしょうか。

本当に必要な教育は、掃除だから黙る、給食だから黙る、ではなく、「みんなが話を聞かなければならないから黙る」「集中したいときだから黙る」といったように黙る必要性を考えさせることではないでしょうか。

忙しさと管理のあまり、教師たちが「教育とは何か」を自分で考える機会が減っているのが心配です。

#13 体罰同様、いずれ超過勤務も許されなくなる

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため無賃残業訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「体罰同様、いずれ超過勤務も許されなくなる」という私の考えについて書きます。

昔は体罰が容認されていた

私が小学校教員になった頃、38年前、その当時の学校現場ではまだ体罰がしつけとして行われていました。

「先生、ウチの子が言うこと聞かなかったら殴ってください」と言う保護者も少なくありませんでした。

今の若者には信じられないかもしれませんが、社会全体として体罰が容認されていたのです。また、体罰はダメなのではないかという声が上がり始めた頃も、まだ教育委員会は身内である教員を守っていました。

しかし、今は違います。世の中は一気に変わりました。人権意識の高まりとともに、体罰は許容されなくなったのです。

今は体罰が発覚すれば校長や教育委員会の責任問題になりますし、未然防止のために教育委員会から学校現場に向けて「体罰防止研修」等も行われています。

なぜか。

言うまでもなく、社会全体の目が厳しくなったからです。日本人の人権意識が向上したのです。

労働問題は体罰問題と似ている

私は労働問題も同じだと考えています。

労働問題も人権問題です。

ここ数年で、世の中では過労死やブラック企業などが社会問題化し、「働き化改革」がキーワードになりました。

体罰問題同様、今度は日本人の「労働に関する人権意識」が向上してきたのです。

先日、文部科学省も学校管理職に向けた「公立学校の教師の勤務時間管理の基本」という動画をYouTubeで公開しました。

これまでは超過勤務は教員の「自主的」なものであると主張してきたお上も、ついに社会全体の労働に関する人権意識の向上に逆らえなくなってきたものと私は見ています。ちなみに、この動画では、明確な指示・命令がなくても、「黙示の超過勤務命令」があるとしています。

これからは、体罰を容認する学校長が許されなくなったように、勤怠管理をしない学校管理職は許されなくなるのだと思います。

体罰が当たり前でなく、社会から厳しい目を向けられるようになったように、勤怠管理のない超過勤務についても当たり前でなく、厳しい目を向けられるようになる日は近いのではないでしょうか。

あるいは、楽観的過ぎるでしょうか。

#12 学校長に労働基準法を意識させる

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「学校長に労働基準法を意識させる」について書きます。

労働基準法は教員にも適用される

私は今、裁判を通して、学校教員の働き方改革を進めたいと考えています。

労働者に一日8時間を超える労働をさせることは、労働基準法違反です。しかし、現状多くの管理職をはじめ学校教員は、この認識に欠けています。

全ての労働者の労働時間は、一日8時間と決まっています。

雇用者は、一日8時間を超えて働かせてはいけないことが原則になっているのです。これはどんな職業に携わっている人も同じです。教育公務員でも同じです。

(民間労働者の36協定や給特法の超勤4項目はあくまでも「例外」です)

学校長に労働基準法を意識させる

今、多くの学校教員の労働時間は、明らかに労働基準法に違反しています。

労働基準法違反は、実は重い罰則があり、使用者を「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処するものです。

本来、学校においても労働基準法違反に対して、使用者は罰せられるべきなのですが、現状そうはなっていません。

私の裁判は、この現状の打破を目的の一つとしています。重い罪に問われることになれば、使用者たる学校長や教育委員会も労働基準法を意識せざるを得なくなるはずだからです。彼らが労働基準法を強く意識するようになれば、間違いなく教員の長時間労働は是正されていくでしょう。

最後に、繰り返しになりますが、私は学校長や教育委員会に労働基準法を意識させることが重要であると考えています。

裁判を通じて彼らの意識を促していければと思っています。

#11 公立学校教員にも強い権限をもつ労働基準監督機関が必要

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「公立学校教員にも強い権限をもつ労働基準監督機関が必要」という私の考えについて書きます。

労働基準監督署の権限は強い

私は、労働基準法違反として埼玉県を訴えています。

公立学校教員に関しても、(給特法により労働基準法37条が適用除外されるものの)労働時間規制を定めた32条、34条、35条、36条が民間労働者同様、適用されるからです。

労働基準法違反があった場合、使用者は「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処されます。

民間労働者であれば、使用者に対し、強い権限が与えられた労働基準監督署が是正措置を行うことになっています。

労働基準監督官には、労働基準法101条、102条により、臨検、書類提出要求、尋問の権限、逮捕、差押、捜索、検証という強制捜査の権限が与えられているのです。

つまり、わざわざ裁判を起こさなくても、労働基準監督署に駆け込めば、彼らが是正措置を行ってくれるのです。

公立学校教員にも、強い権限をもつ労働基準監督機関を

ひるがえって、公立学校の教員に対する労働基準監督権限については、労働基準監督署ではなく、「人事委員会」などの任命権者である自治体内組織に委ねられています。

しかし、この「人事委員会」は労働基準監督署とは異なり、第三者ではなく、また強い権限も持ち合わせていません。

公立学校教員には、民間労働者のように、強い権限でもって労働基準監督を行う機関が存在しないのです。

そのために私は本意ではないにもかかわらず、訴訟を起こさざるを得ませんでした。

地方公務員に対しては、自治体が労働基準法違反を起こさないだろうという性善説に依っているせいでしょうか。

しかし現実には、全国の公立学校で労働基準法違反が蔓延しています。

公立学校教員にも、民間労働者のための労働基準監督署のように、強い権限をもつ第三者の労働基準監督を行う機関が必要です。

私のように、いちいち裁判を起こさなくても、そこに駆け込めば是正措置、強制捜査などを行ってくれる機関があれば、教員の労働環境の悪化をある程度は食い止めることができるのではないかと思うからです。

#10 教員の超過勤務問題は、体罰・いじめ問題と同じ

現在、埼玉県教育委員会に対し長時間労働の是正を訴えるため超過勤務訴訟を起こしている、小学校教員・田中まさおです。

今日は、「教員の超過勤務問題は、体罰・いじめ問題と同じ」であることについて、書きます。

体罰・いじめ問題は教育委員会が動いて変わった

教員の体罰は、今では許されません。

しかし、ここに至るまでには、長い年月がかかりました。それは時には体罰も必要だとする教員の声、保護者の声があったからでした。

しかし、今では、文科省や教育委員会などが学校長に対し指導を徹底するようになったことで「体罰は許されないことだ」という認識が広がりました

いじめの問題も同様です。

一昔前までは「いじめられる子にも問題がある」という理屈がまかり通っていた節がありました。しかし、このいじめ問題も教育委員会からの調査の徹底により、各学校でアンケート調査が行われるなど認識が変わりました。確かにまだ、いじめ問題は完全には解決に至ってはいませんが、現場の認識が変わったことは明らかです。学校長が本気で対応することによって、学校のいじめに対する認識が昔に比べ強くなっていきました。

このように、体罰やいじめの問題は、文科省・教育委員会が動いたことにより、認識が変わっていったのです。

世論が教育委員会を動かした

前述のように、体罰やいじめの問題について、一昔前まで教育委員会も学校長も甘い認識しかもちあわせていませんでした。

それが、体罰やいじめの被害者の話やマスコミの影響によって、だんだんと認識が変わっていきました。そして、体罰やいじめについて問題認識をもつ人達がどんどんと増えていったのです。そして、教育委員会が動くことになったのです。

教員の超過勤務問題は、どうでしょうか。

現状、教育委員会からの学校長への指導の徹底がありません。教育委員会はまだまだ労働基準法違反について認識が非常に甘いのです。教員も労働基準法が適用されるにもかからわず、です。

教員も労働基準法に則り、一日の労働時間は7時間45分。そして、45分間の休憩を取らせなければならないのです。(超勤4項目はあくまで例外です)

教育委員会が学校長に対して指導を徹底することによって学校現場の体罰やいじめ問題への認識が変化したのと同じように、教員の超過勤務問題も教育委員会が動くことにより改善していくのだと私は考えています。

ですから、まずは教員の超過勤務問題に対してたくさんの人が声を挙げることが、世論を動かすことになり、やがては、教育委員会を動かすことにつながるのだと思います。

私の裁判も、教育委員会を動かすことにつながれば良いのですが。